いま、ニュースでも度々見るこの「相席ブロック問題」を解説します。
長時間の移動で疲れた体を少しでも癒やしながら行きたい高速バス。隣にどんな人が座るのか、気になりますよね。「できれば隣は空席であってほしい」。そんな願いから生まれた迷惑行為が、今、バス業界を揺るがしています。その名も「相席ブロック」。安価なキャンセル料を悪用し、意図的に隣席を空席にするこの行為が、なんと弁護士によって「詐欺罪や偽計業務妨害罪に当たる可能性がある」と指摘されているのです。
快適さを求めるささやかな行為が、なぜ犯罪になりうるのでしょうか?「席ガチャ」を回避するための身勝手な手段が招いた、法律上のリスクと、これに対するバス会社の最新対策を分かりやすく解説します。
衝撃の真実!「相席ブロック」って何?

「相席ブロック」とは、高速バスの利用者が行う特定の予約・キャンセル行為を指します。
- 行為の定義
- まず、自分が座りたい席と、その隣の席を同時に予約します。
- その後、バスの出発直前に隣の席の予約だけをキャンセルします。
- キャンセル料は支払いますが、隣の席は空席のまま出発するため、利用者は隣に誰も座らない「実質的な貸し切り状態」で快適に移動できます。
- なぜ横行するのか?
- 多くの場合、高速バスの直前のキャンセル料が非常に安価(路線や会社によっては出発時刻まで一律110円など)に設定されていることが、この行為を助長する大きな原因です。少額を払うだけで快適さを買える、という考え方が背景にあります。
- バス会社と他の利用者が受ける被害
- その席に本来乗車できたはずの別の乗客の利用機会を奪ってしまっています。特に繁忙期には深刻です。
- バス会社は、本来得られたはずの運賃収入を失うという、経済的な損害を被っています。
弁護士が指摘!「相席ブロック」が問われる可能性のある罪
個人的な快適さを追求したこの行為ですが、法律の専門家から厳しい指摘が出ています。弁護士によると、「相席ブロック」は以下の罪に問われる可能性があります。
詐欺罪(刑法246条)
席の予約は、バス会社との間で運送契約を結ぶ行為です。
- 問題のポイント
「お金(運賃)を払うつもりがないのに席を予約した」という点です。 - 弁護士の見解として、バス会社をだまして席を確保し、財産上の利益(隣に人がいない快適さ)を取得したと見なされた場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
偽計業務妨害罪(刑法233条)
- 問題のポイント:不当なキャンセルを繰り返すことで、バス会社の予約管理や座席割り当ての業務が混乱させられているという点です。
- この「偽計(人を欺く行為)」によって業務を妨害していると判断された場合、偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。
バス会社は動いた!キャンセル料引き上げの波
この深刻な迷惑行為に対し、バス会社も重い腰を上げ、キャンセルポリシーの厳格化に乗り出しています。
- キャンセルポリシーの厳格化:
- 西日本鉄道やJRバス中国など、複数のバス会社が、キャンセル料の大幅な引き上げを実施しました。
- 具体的な変更例では「一律100円」だったキャンセル料を、出発が近づくにつれて運賃に対する割合(例:出発24時間前以降は運賃の50%、出発2時間前からは運賃の100%)に引き上げる措置が取られています。
- システム改善の検討:
- キャンセル料の引き上げに加え、悪質なキャンセルを繰り返す利用者へのアカウントチェックの厳格化や、予約の制限を行うなどのシステム的な対策も選択肢として検討されています。
快適さを求める行為が「犯罪」になる前に
「足を組んでくる人が嫌だ」「変な隣人だったらどうしよう」街の人の声にもあるように、長時間の移動で隣人を気にする気持ちは理解できます。一部の人はこの行為を「席ガチャ」と呼び、運任せにしたくないという気持ちの表れかもしれません。
しかし、安価なルールを悪用して他社の機会を奪い、業務を混乱させる行為は、もはや「マナー違反」では済まされない段階に来ています。
個人的な快適さを追求する行為が、法を犯す可能性や、バス会社や他の利用者に実害を与えることは許されません。チケットを購入するという行為は、バス会社との契約です。そのルールとマナーを守って、お互いが気持ちよく利用することが、安全で快適な高速バスの旅を守る唯一の方法と言えると考えられています。


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